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移住者インタビュー:理想の暮らしをするなら、南信州(長野県の南部)がちょうどいい

信州・いいだ暮らしを運営する、宇佐美不動産有限会社の取締役社長の宇佐美夏樹さんをインタビューしました。宇佐美さんは高校卒業後に上京しましたが、昨年4月に家業を継いで、現在は飯田市と東京との二拠点生活をしています。
自然と現代的な暮らしの共存
ララ:
二拠点生活に移行しつつある、というお話でしたね。
宇佐美夏樹:
高校を卒業してから、ずっと関東圏をベースに住んでいました。数年前に祖父が他界したあたりから、地元の仲間の飲み会や文化イベントに参加するようになり、最近は時間があれば飯田市に帰ってきていて、ほぼ二拠点生活になっています。もちろん仲間がいるというのは大きな理由なのですが、長野県でも知名度が高くはない南信州の風景の写真を撮るのが楽しみです。
ララ:
最初は高校時代の友達とのつながりから、写真撮影に移行していったという感じ?
宇佐美夏樹:
いえ、写真は学生時代から好きで、ずっと続けていました。二拠点生活を始めるまでは、関東圏、甲信越でも山梨県や群馬県あたりで写真撮影をしていました。日本は自然が豊かですから、きれいな景色は沢山あります。でも、撮影スポットも含めて、自然写真というには、人間の生活の色が入り込みすぎていると感じていました。
ララ:
人間の生活の色ですか?
宇佐美夏樹:
ええ、建物や看板、電線といったものを避けながら、自然写真を撮っている時もあるんです。悪くいってしまうと、風景の一部を切り取るところもあって、人間の生活を見せないような撮り方をすることもあります。それは間違ってはいないのですが、撮影できるスポットが限られてくるので、写真愛好家の人たちが自然とスポットに集まってきてしまうんです。自然の美しさを自分なりにカメラに収めたい、という純粋な気持ちと、集まってきている愛好家との場所の取り合いというか、ちょっと純粋ではない気持ちも入ってきたりします(苦笑い)
ララ:
南信州での二拠点生活の楽しみはどんな感じですか?
宇佐美夏樹:
私は、中央高速道路にアクセスが良い東京都の西側に住んでいて、飯田に帰ってくることは苦にはなりません。普通に高速道路を走って、私なら車で3時間くらいじゃないかな。実家に帰ってから友人に会ったり、仕事や写真撮影をしています。普段運転をしない人は、1時間~2時間くらいが限度かもしれないけど、慣れてしまえば3時間は決して長い時間ではないです。普段立ち寄らないサービスエリアに寄ってみたり、たまには一般道路を走ってみて、伊那谷も谷の起伏で川の流れも景色も変わるし、国道から外れると急に自然がきれいな道があったりします。
※伊那谷:長野県南部の天竜川が流れる地域全般を指します
ララ:
飯田市は、そこそこ都会ですしね。
宇佐美夏樹:
そうですね。確かに幹線道路沿いにはナショナルチェーン店がありますし、最近はドン・キホーテもできちゃってます(笑)。以前は、都市部の人が、私から見たらひどく不便な地域にあえて移住されるケースもありました。でも、最近の傾向では、そこそこな都会がある地方に拠点を持つ方が良い、と言われています。もちろん、人それぞれの価値観があるので、昔ながらの生活スタイルを楽しむのも良いと思います。でも、地域によってはインターネットの固定回線がなかったりしますし、それなりに現代的な生活が送れる環境に身を置きながら、少しずつ活動範囲を広げていく方が、地方移住や二拠点生活は継続しやすいのではないでしょうか。
ララ:
飯田市で四季を楽しむ、最近だと春の季節はどんな風に楽しんでますか?
宇佐美夏樹:
まず、被写体になる自然の変化は、季節ごとに楽しいですよ。春は桜や花桃といった樹木が一斉に花開きます。早春には梅の花やクリンソウという地域の花も咲くので、意外と春の季節は長く楽しめます。
あと、南信州の特徴は、都市部の公園みたいに人為的に大量の桜を植えている場所が少ないところだと思います。1本桜の古木が多くて、桜守(さくらもり)と呼ばれる人たちが桜の世話や案内をしてくれます。昔の人たちが1本だけ植えた桜は、まちの景観に溶け込んでいて、桜とその周辺の別の種類の樹木との調和を大事に守っていこうというストーリーが、南信州の桜にはあると思います。
ララ:
沢山の桜が植えられていたら、にぎやかだと思うのですが。それに、少なからず観光客も来る気がするし。
宇佐美夏樹:
確かに、南信州では伊那市の高遠城址(たかとうじょうし)の桜なんかは有名で、観光客も沢山訪れています。植樹したころから保存会があって、高遠町や伊那市(以後、合併)の住民の努力で保たれていて、桜の名所になっています。民度や文化度の高さもあると思いますし、地域にまとまりがあるんだと思います。でも、飯田下伊那(飯田市とおよび周辺の町村、南信州の南部)にも、新たに桜を植えた場所はあるんですが、高遠城址ほどには盛り上がっていません。それは、行政の観光関連部署のマーケティングに問題があるのかもしれません。それに、飯田下伊那の人たちは、独立独歩の気概があって、個人や小さなグループで頑張っている人たちが多いかもしれないです。
ララ:
そうですね、もう少し盛り上がりがあっても良い気がしますが。
宇佐美夏樹:
飯田市は、集客や商業にあまり興味がないのかもしれません。桜守の例なら、多くの一本桜を守っていきたいという意識を持つ個人たちが緩くつながって活動している結果なのかもしれません。もしかしたら、商売っ気がないことで既得権益みたいなものもなく、飯田市で暮らしてみたい人で桜も好きな人は、純粋に桜を好きな人たちと損得勘定なく出会える、という利点があるという見方もあるかもしれません。
ララ:
盛り上がりという点では、星空も有名ですね。
宇佐美夏樹:
はい。下伊那郡阿智村は環境省から「日本で一番夜が暗い場所」とのお墨付きを頂いていて、星空がきれいです。阿智村はスキー場があって、スキーのオフシーズンに当たる夏の時期は、星空を楽しむための環境が商業として成立しています。温泉観光地として長い歴史がある場所ではないですが、東海地方からは2時間程度のアクセスです。関東でいう熱海温泉、関西なら有馬温泉といったポジションだと思います。そこから15分足を延ばせば、天龍峡温泉があるので、その点では大分県の別府と湯布院といった感じなのかもしれません。
ララ:
阿智村の星空はきれいですか?私はまだ見に行ったことがないです。
宇佐美夏樹:
実は、私も行ったことがないです。飯田市内の市街地から外れた公園に行けば、きれいな星空は見られるし、写真撮影という点では人が少ない方が良い。飯田市内なら、天竜川の東側だと街頭などが比較的少ないので、天気さえよければ毎晩きれいな星空が見えちゃう。そういう環境だから、星を見たいなと思ったら、地元の人は近所の公園に行ってしまうと思います。
ララ:
初回は、ご趣味の写真を中心にお話ししましたね。
宇佐美夏樹:
初回なので、趣味の話をさせてもらえて楽しく話が出来ました。そういえば、飯田市内の写真愛好家のだけに限られると思いますが、写真愛好家たちは、それぞれに秘密の写真スポットがあって、それを披露しあう傾向があるかもしれません。そう考えると、生活の中で楽しみを見つけることに長けているのかもしれません。都会的な、誰かから与えられる楽しみではなく、自分で楽しみを見つけていくのが地方での生活の楽しみ方なのだと思います。
-話を終えて-
リニアが開通すると、品川駅から40分、名古屋駅から15分で来られる場所になります。そうなったら、その時の世の中の働き方次第ですが、飯田での暮らしに比重を置いた二拠点生活がより現実的なものになりますね。
「自分で楽しみを見つけていく」という暮らしを楽しんでみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人 ララ
南信州生まれ。焼肉のニュータイプとライターの2足のワラジで活躍中